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​涙はどこから来るの

小さいころ、じいちゃんと水戸黄門を観て一緒に泣いていました。

「いい話だったね・・・」と言うと、

「おう」と言って、服で涙を拭いていました。

私は、

この涙は心の奥の何から来ているのか、

じいちゃんも何に泣いているのか、ずっと知りたいと思っていました。

​亡くなる少し前、ベッドに横たわるじいちゃんの目に涙がありました。

いつものように手で遮られたって写真に撮ることはできても、最後までその意味を知ることはできませんでした。

私はこの作品を見返すとき、いつも必ず涙が出てきます。

自分の涙の意味でさえ、今だに知ることはできないままです。

 

だけど、

少しずつわかってきたことがあります。

何かが無くても、失ったとしても、

嬉しいことも、笑う時も、それが何かを認識できなかったとしても、

むしろ消えてほしいと願う傷でさえも、

すべて同じところに入っているということです。

悲しみが大きく見えて、喜びが小さく遠く、大切な事を忘れ去ってしまうこともあります。

でもそんな時、心の中を静かに見に行ってほしいと思う。

涙もあれば、喜びや幸せも必ずそこにあるということだから。

わからないものがあっても、それが心というものだから。

そしてしっかり見つめていくと、少しずつでも何かがわかっていくものなんだと、

それが生きていくということなのかなと思う。

だから私は、この写真で伝えたいです。

「大丈夫だよ。」って、涙する、すべての人に。

1996-2006撮影、2012-2014制作、Canon EOS Kiss/RICOH XR500/Mamiya645、撮影地 北海道士幌町

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